日本心臓血管内視鏡学会 学術集会・イベント

学会賞(褒賞内田賞・ベストイメージ賞)

内田賞について・応募要項について

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第36回学術集会 褒賞内田賞

「Preoperative four-dimensional flow-sensitive magnetic resonance imaging assessment of aortic side branches as a method to predict risk for type II endoleak resulting in sac enlargement after EVAR」

山中 裕太(浜松医科大学附属病院 外科学第二講座 血管外科)

 この度は大変栄誉ある褒賞内田賞を賜り、内田康美先生、選考委員の先生方に心より厚く御礼申し上げます。

 腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)は全世界で普及し、近年では開腹手術の件数を越えました。しかしEVAR術後の瘤径増大が問題視され、最多原因である瘤内への血液流入(エンドリーク,EL)が着目されております。特に瘤分枝を原因とする2型ELの多くは自然に消失しますが、瘤増大に至る症例も認められ、多くの施設において治療選択に難渋しています。

本研究はFour-dimensional flow-sensitive MRI (4D-flow MRI)を用いて、2型ELにより瘤径増大する症例をEVAR術前に同定し、分枝への治療介入が必要な症例を選択することを目的としております。
4D-flow MRIは速度によって信号強度が異なるというMRIの特性を活かし、心周期に同期した撮影により流体の空間的時間的変化を表現・解析することが可能なモダリティです。昨今では血行動態と病態生理の関係を明らかにする方法の1つとしてエンドリークの評価にも期待されています。
EVAR100症例において558本の瘤分枝を解析し、37本の分枝が2型ELを発症し9例で瘤径増大を認めました。瘤径増大群では非増大群に比べ、分枝血流量の総和が有意に高く、カットオフ値13.56ml/min (感度100%、特異度96.5%)を得ました。カットオフ値を超える症例ではEVAR術後に2型ELにより瘤径増大する可能性が高く、分枝塞栓術等の治療介入が推奨されます。本法を用いれば、瘤径増大する症例をEVAR前に予測でき、必要十分な瘤分枝塞栓術を施行できる可能性があると考えます。

図1

最後になりましたが、今回の受賞に際しこれまでご指導いただききました多くの先生方に深く感謝申し上げます。