日本心臓血管内視鏡学会 学術集会・イベント

学会賞(褒賞内田賞・ベストイメージ賞)

内田賞について・応募要項について

褒賞内田賞の主旨や条件等・応募要項につきましては、こちらをご参照ください。⇒詳細ページへ

第30回学術集会 内田賞

「Enhancement Patterns Detected by Multidetector Computed Tomography Are Associated with Microvascular Obstruction and Left Ventricular Remodeling in Patients with Acute Myocardial Infarction(Eur Heart J. 2016; 37: 684–692)」

渡部浩明筑波大学附属病院 救急診療科・循環器内科

田中宏樹

この度は褒賞内田賞の名誉を賜りまして、内田康美先生をはじめ、選考委員会の先生方に心より厚く御礼申し上げます。

心筋梗塞の慢性期に生じる左室リモデリングは、心不全や致死性不整脈および心血管死の主要なリスク因子であり、その発症予測は臨床上重要とされています。現在、心筋梗塞後の心筋傷害の画像評価にはMRIが多く用いられますが、近年、MDCTで撮像される心筋の遅延造影所見が急性心筋梗塞の梗塞サイズの評価に有用であることが明らかとなり、さらに、心筋梗塞に対するPCI終了直後に非造影でMDCTを撮像しても遅延造影所見が得られることが報告されました。
本研究はこの手法を用いて急性心筋梗塞におけるMDCT遅延造影像を評価し、遅延造影領域内にhypoenhanced areaを有するものを新たにheterogeneous enhancement(図1)と定義し、これがMRIの microvascular obstruction (MVO)所見と一致していること、心筋梗塞の慢性期に発生する左室リモデリングを予測することを報告しました(図2)。

 

図

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この検査はMDCTを用いて比較的容易かつ短時間で撮影でき、急性心筋梗塞に対するPCIの直後に心筋梗塞の重症度を評価することができ、新たな画像診断ツールの一つとして有望と考えております。

最後になりましたが、本研究のご指導を賜りました筑波大学の佐藤明先生、青沼和隆教授はじめ、筑波メディカルセンター循環器内科スタッフ、放射線技師スタッフの皆様に心から感謝申し上げます。

第30回学術集会 ベストイメージ賞

「血流維持型大動脈内視鏡を用い著明な破綻プラーク像を観察しえた一例」

益永 信隆(近畿大学医学部堺病院循環器内科)

 この度は、第30回日本心臓血管内視鏡学会ベストイメージ賞に御選考頂き誠に有難う
ございます。歴史のある本学会において、このような賞を頂き光栄で、石原会長をは
じめ審査していただいた先生方にお礼申し上げます。

今回、血流維持型血管内視鏡で観察することができた「腹部大動脈壁に潜む著明な破
綻プラーク、潰瘍性病変」の画像を提示させて頂きました。代表所見は、腎動脈下大
動脈壁において、破綻プラークが盛り上がり、それがあたかも火山の噴火口の様に見
え、その中心部が血管の拍動と共に開閉している像でした。
本症例は無症状で、末梢塞栓、特に下肢の虚血症状もなく、造影CTでも大動脈壁の不
整を認めるのみで大動脈瘤の形成は認めませんでした。しかし血管内視鏡で観察する
と、このような著明な潰瘍性病変が大動脈壁内に潜んでいることに大変驚愕しまし
た。

今回は病理的な観察はできておりませんが、この様な著明な破綻プラークを伴った潰
瘍性病変の存在が、大動脈イベントの発症、また大動脈原性末梢塞栓症発症の一因と
なっている可能性が考えられます。
今後も症例を重ねることで血管内視鏡による大動脈硬化病変の観察が、急性大動脈症
候群の病態解明に役立てればと思います。

最後に、今回の受賞に際しご協力いただいた近畿大学医学部堺病院の先生方やスタッ
フの方々に深く感謝申し上げます。