日本心臓血管内視鏡学会 学術集会・イベント

学会賞(褒賞内田賞・ベストイメージ賞)

内田賞について・応募要項について

褒賞内田賞の主旨や条件等・応募要項につきましては、こちらをご参照ください。⇒詳細ページへ

第29回学術集会 内田賞

「Blood flow dynamic improvement with aneurysm repair detected by a patient-specific model of multiple aortic aneurysms」Heart Vessels 2013;29, 404-412

Koichi Sughimoto 杉本晃一Royal Children's Hospital, Melbourne, Australia

田中宏樹

歴史ある褒賞内田賞の受賞に至り、内田康美先生、選考委員会の皆様方に深く感謝を申し上げます。

本研究は、computer fluid dynamicsを用いた血流解析法により、患者さんの大動脈形態に合わせた患者個別モデルを作成し、壁応力、壁ずり応力、さらに拍動血流の運搬効率が、動脈の形態の違いでどのように変化するのかを明らかにしたものです。

対象患者は、胸部と腹部に大動脈瘤を持ち、段階的に人工血管置換術を行いました。術前、術後1回目、術後2回目のCTから大動脈の3D modelを作成し、拍動流の血流を境界条件として与え血流シミュレーションを行いました。

その結果、拍動流圧係数(PPI)は0.445 から0.423 (初回術後) 、0.359 (2回目術後)と減少し、拍動流エネルギー損失係数(PELI)は0.986 から0.820 (初回)、0.831(2回目)と減少しました。つまり人工血管置換術は、動脈の破裂防止の役割を果たすだけでなく、効率的な血液伝搬を可能にし、血流のエネルギーロスを抑える働きがあることが明らかになりました。

Computer fluid dynamicsを用いた研究は様々なものに応用が可能です。今後、患者個別モデルをさらに進化させて、どの治療法が最適なのか、治療効果の判定に用いたり、複雑心奇形を持つ先天性心疾患の分野にも応用したりと、研究の範囲を広げていきたいと思います。

今回の受賞にあたり、共同研究者の方々のご尽力に改めてお礼を申し上げます。また日本心臓血管内視鏡学会のさらなる発展を祈念致します。

 

図


壁応力(wall shear stress)の変化。術前、1回目術後、2回目術後。人工血管置換術のよりWSSの低下を認めた。

図


拍動血流のエネルギー損失指標(averaged PPI, PELI)。人工血管置換術により、拍動血流のエネルギー損失は改善した。

第29回学術集会 ベストイメージ賞

「大動脈内視鏡を観察した腎血管性高血圧の2症例」

峯木 隆志(日本大学板橋病院循環器内科)

 この度は第29回日本心臓血管内視鏡学会 ベストイメージ賞にという大変名誉ある賞に御選出いただき、選考委員の先生方に御礼を申し上げます。

 今回、若年者の腎動脈狭窄症の患者に大動脈内視鏡を用いて観察を行った2症例に関して提示させていただきました。1症例目に関しては線維筋性異形成を基礎疾患としたもの、また、2症例目に関してはアテローム性動脈硬化症を基礎疾患として認めたものでした。
30歳前後という若年者ではありますが、両症例ともに大動脈内視鏡にて動脈硬化の進展を認めておりました。Risk factorに関してはアテローム性動脈硬化症の方が多く、やはり大動脈内視鏡所見としても矛盾しない所見で、動脈硬化の著明な進展を認めておりました。
それに対して線維筋性異形成の症例においてはRisk factorとしては高血圧程度でしたが、すでに大動脈内には黄色プラークが散在性に存在しており、若年者から動脈硬化は始まっている可能性が示唆されました。
まだ当院での若年者での大動脈内視鏡症例の蓄積は少数ですが、30歳前後の若年者においても動脈硬化が始まっている可能性があることに関しては我々としても驚きでしたし、今後の血管内視鏡検査に対するモチベーションにもなっております。今後も症例数を重ねて再度ご報告させていただきたいと存じております。
今回の受賞に際してご指導いただいた先生方、協力いただきました当院カテーテル室スタッフの方々に深く感謝申し上げます。