日本心臓血管内視鏡学会 学術集会・イベント

学会賞(褒賞内田賞・ベストイメージ賞)

内田賞について・応募要項について

褒賞内田賞の主旨や条件等・応募要項につきましては、こちらをご参照ください。⇒詳細ページへ

第28回学術集会 内田賞

「Hemodynamic assessment of celiaco-mesenteric anastomosis in patients with pancreaticoduodenalartery aneurysm concomitant with celiac artery occlusion using flow-sensitive four-dimensional magnetic resonance imaging.」

眞野勇記(磐田市立総合病院)

このたびは栄誉ある褒章内田賞にご選出いただき、内田康美名誉理事長をはじめ選考委員の先生方に御礼を申し上げます。

近年開発されたfour-dimensional flow-sensitive MRI (4D-flow)は速度によって信号強度が異なるというMRIの特性を活かし、心周期に同期した撮影を行うことで流体の空間的時間的変化を表現・解析することが可能なモダリティで、血行動態と病態生理の関係を明らかにする方法の1つとして期待されております。
以前より、膵十二指腸動脈(PDA)瘤にしばしば腹腔動脈の閉塞・狭窄が合併することは知られており、経験的に閉塞・狭窄による血行動態の変化が瘤化に関与していると推測されていました。今回我々は4D-flowをもちいて腹腔動脈の閉塞が腹腔動脈-上腸間膜動脈吻合にどのような影響を与えているか血行動態の面から検討いたしました。
結果としてControl群に比べ、Patient群では血管内で有意に乱流・渦流を認め(Fig.1)、胃大網動脈と上腸間膜動脈で血流量の増加が認められました(Fig.2 )。また、壁せん断応力(WSS)の局所的な低下がPDAアーケードに正常径部分にも認められ(Fig.3)と振動せん断指数(OSI)の高騰が腹部内臓動脈に広く分布している(Fig.4)のが認められた。
これまでに低WSS・高OSIと脳動脈瘤や動脈硬化との関連性が報告されており、腹腔動脈が閉塞したことによる血行動態の変化が血流やWSSの変化を惹起し、動脈瘤の形成や増大に関連していると推測されました。

図

最後になりましたが、今回の受賞に際しこれまでご指導いただききました多くの先生方に深く感謝申し上げます。

第28回学術集会 ベストイメージ賞

「血管内視鏡画像による冠動脈粥状硬化の組織性状評価」

藤井健一(兵庫医科大学 循環器内科)

この度はベストイメージ賞を賜り、尾崎会長はじめ、私達の発表演題をご評価下さいました先生方に厚くお礼申し上げます。

私達は実臨床において、血管内視鏡で冠動脈の観察を始めたのはごく最近のことですが、臨床での症例を重ねていくうちに、一つの疑問が浮かんでまいりました。それは、1人あたりの患者に認められる不安定プラークの頻度が病理の報告と臨床での報告(yellow plaqueの数)で大きく異なる点です。そこで、本学の病院病理部の羽尾准教授のご協力のもとに、剖検症例の冠動脈を血管内視鏡でex vivoで観察し、プラークの色調とその病理画像の対比を検討いたしました。結果、これまでの報告通り、血管内視鏡でのwhiteプラークのほとんどは、厚い膠原繊維を有する線維性プラークなどのいわゆる安定プラークがで、intensive yellowプラークの大部分は大きな壊死性コアと薄い線維性被膜を有する不安定プラークでした。しかしながら、light yellowやyellowプラークは病理学的には必ずしも進行性の脂質成分ではなく、泡沫細胞のような動脈硬化進展の初期段階に見られる脂質や、石灰化成分を含んだプラークをも含んでいました。
今回の検討で、whiteプラークやintensive yellowプラークの組織整合性が高いことが証明されたため、今後は進行性の脂質性プラーク、石灰化プラーク、初期段階に見られる幼弱な脂質を正確に区別できるよう、それぞれの特徴を詳細に調査し、また報告させて頂きたいと思っております。
今回、栄えある賞を賜ったことに際し,御協力頂きました医局員、検査技師の方々に深く感謝申し上げます。