日本心臓血管内視鏡学会 学術集会・イベント

学会賞(褒賞内田賞・ベストイメージ賞)

内田賞について・応募要項について

褒賞内田賞の主旨や条件等・応募要項につきましては、こちらをご参照ください。⇒詳細ページへ

第35回学術集会 褒賞内田賞

「Characteristic findings of microvascular dysfunction on coronary computed tomography angiography in patients with intermediate coronary stenosis」

星野 昌弘(土浦協同病院)

 この度は大変栄誉ある褒賞内田賞にご選出くださり、内田康美先生、選考委員の先生方に厚く御礼申し上げます。

 本研究では、冠動脈病変における線維性脂肪プラークと壊死性プラークの総量、心臓周囲脂肪の増加に加えて、冠動脈血管体積の低下と冠動脈容積の上昇、病変のremodeling indexが、心臓カテーテル検査によって評価できる冠微小循環障害の程度を表すindex of microcirculatory resistance (IMR)の上昇とそれぞれ独立して関連することが示されました。冠微小循環障害は心外膜冠動脈病変の存在に関わらず、1/3程度の安定狭心症患者に認められています。本論文は冠動脈CTによる包括的な心臓の評価と冠微小循環障害の関係を報告した初めてのものであり、大変重要な意義があるものと考えております。
 本研究では、冠動脈CTの所見だけで、高い確率で微小循環障害を予測できる結果であり、冠微小循環障害にも心外膜血管同様に、一定以上の動脈硬化が成因に関与することを示唆しております。(図) 冠微小循環障害の存在は、心外膜冠動脈病変の有無とは関係ありませんでした。つまり、心外膜冠動脈に対して冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス手術を行っても、冠微小循環障害が残存する可能性があります。非閉塞性冠動脈由来の虚血性心疾患同様に、冠微小循環障害を伴う症例においては、予後に悪影響を及ぼす可能性があります。冠微小循環障害に対しては、効果的な薬物療法は未だにはっきり分かっていませんが、心外膜冠動脈病変の存在に応じて、冠微小循環障害を伴う動脈硬化が強い症例に関しては、スタチン系薬剤がコレステロール低下や抗炎症作用を持つために、有効である可能性も考えられます。
 今回の研究で、冠動脈CTは、侵襲的な心臓カテーテル検査を行わずに冠微小循環障害の有無を検討できる可能性があることが分かりました。心外膜冠動脈病変における虚血のゲートキーパーとしての重要な役割を持っていた冠動脈CTですが、微小循環障害の存在も評価できるようになれば虚血性心疾患の診断に非常に有用であり、ならびにそれによる将来の心血管イベントの予測や予防に大きく貢献するものと期待します。

 最後に今回の受賞にあたり、研究の指導を賜りました角田恒和先生、笹野哲郎教授、そして共同研究者の先生方、カテーテル検査室のスタッフの皆さんに心から感謝申し上げます。

図1