学会賞(褒賞内田賞・ベストイメージ賞)
内田賞について・応募要項について
褒賞内田賞の主旨や条件等・応募要項につきましては、こちらをご参照ください。⇒詳細ページへ
第32回学術集会 内田賞
「Fluorescent angioscopic imaging of calcium phosphate tribasic: precursor of hydroxyapatite, the major calcium deposit in human coronary plaques.」 Int J Cardiovasc Imaging. 2017 Oct;33(10):1455-1462.
小林 隆信(千葉健生病院・船橋二和病院 循環器内科)
(受賞時在籍 長野中央病院 循環器内科)
このたびは褒賞内田賞の名誉を賜り、選考委員会ならびに本学会の先生方に深く感謝を申し上げます。
冠動脈におけるcalcium化合物の沈着、すなわち石灰化は冠動脈疾患のリスクファクターとして知られています。またヒト冠動脈に沈着するcalcium化合物には少なくとも11種類が知られていますが、その中でも主要なものはhydroxyapatite [Ca5(OH)(PO4)3]x とされており、これはcalcium phosphate tribasic [Ca5(OH)(PO4)3] (CPT)が重合し形成されるものです。今回我々は食品の染色などに古くより用いられているlac dye (LD) がCPTに特異的な蛍光を示すことを発見し(図1)、剖検例より得た冠動脈を用いて蛍光血管内視鏡による可視化に成功しました。(図2)は同手法を用いてyellow plaqueを観察した結果です。
現在冠動脈の石灰化そのものを予防、もしくは既に生じた石灰化を退縮させうる治療方法というものは実現していませんが、本研究で示したCPT観察方法により今後この分野に対する理解が深まり、新たな治療的アプローチの発展に繋がることが期待されます。
(図1)
(図1の説明)
蛍光顕微鏡(CFM)によるcalcium phosphate tribasic (CPT) の観察。
CPT自体に自家蛍光は認めないが(A)、lac dye (LD)による染色で赤色の蛍光を示す(A-1)。また血管内ではcollagen線維としてcollagen Iが豊富に存在し、CPTもcollagen Iとともに存在しているため、これらの混合物を作成しLDで染色したところ紫色の蛍光を示すことがわかった(C-1)。このような蛍光パターンは他のcalcium化合物では認めず、CPTに特異的なものであった。
以上の結果より、血管内にLDを投与し紫色の蛍光を観察することで、CPTの沈着を可視化できると考えた。
(図2)
(図2の説明)
LDを用いて剖検例から得た冠動脈を観察した結果。観察に用いた部位は通常の血管内視鏡にて、yellow plaqueとして識別される(A)。
LD投与後の蛍光血管内視鏡による観察で、びまん性に紫色の蛍光を認め、この部位にCPT沈着が認められると判断した(B-1)。同部位を短軸面で切断しCFMで観察すると(B-2)、necrotic coreのfibrous cap表面にhydroxyapatiteと思われるcalcium結晶の層を認め(白矢印)、結晶周囲を紫色の蛍光を示すCPTが覆っているのがみられる。組織票本にて、このcalcium結晶の層は褐色に観察される(B-3)。
第32回学術集会 ベストイメージ賞
「石灰化結節を血管内視鏡で観察しロータブレーターを施行した一例」
日本医科大学附属病院 循環器内科 轟崇弘
この度は、第32回心臓血管内視鏡学会のベストイメージ賞を賜り、誠に光栄に感じております。またご選考をいただきました先生方に深く感謝いたします。私は日本医科大学 循環器内科に入局し、現在まで多くの先生方にご指導を頂きつつ臨床・研究を行わさせていただいております。今回、「石灰化結節を血管内視鏡で観察しロータブレーターを施行した一例」について発表をさせていただきました。
現在、多くのmodalityが冠動脈病変の観察に利用可能な状況ですが、その中でも石灰化結節の性状を直接確認することにより評価することは、血管内視鏡の特性を生かした臨床状況に直結した有用な活用法であるかと考えられました。
今後も血管内視鏡の可能性を最大限生かすことができるよう、臨床・研究ともに研鑽を続ける所存です。
末筆になりましたが貴学会の益々の御発展を祈念いたします。今後ともご指導ご鞭撻の程何卒宜しくお願い申し上げます。